我が村自慢の農作物から生まれた、オイシイ町おこしのアイデア3例
1.はじめに
地方で大きな問題となっている、少子高齢化。
都市部の人口集中化は、コロナ禍において地方移住への可能性に向けての新しい局面も見せていますが、いわゆる「過疎地」と呼ばれる地域にはその恩恵も難しくなっているのが現状です。
物品の購入はネットで!というスタイルが固定されつつあるものの、土の香りや田舎ならではの開放感が味わえる「収穫体験」が着目されています。
世の中の流れに合った少し広い視野で、農業を通した地域づくり、町おこしについて考えてみることが、地域活性化の近道となります。
地方、特に田舎の方では過疎化がますます進んで、周りは高齢者ばかりで活気がない、といった状況になってはいないでしょうか。
農業は単に食物を育てたり酪農を営んでいるだけでなく、その地域を活性化し、守っていく役割もあると思います。
今回の記事は農業による町おこし・村おこしの、代表的な成功例を3つ紹介したいと思います。
2. 農業体験型テーマパーク「伊賀の里モクモク手づくりファーム」
三重県「伊賀の里モクモク手づくりファーム」は、民間の会社が運営するテーマパークです。
魅力のある施設に人が訪れ、地域の活性化につながっている例としてご紹介したいと思います。
「伊賀の里モクモク手づくりファーム」は、農作物はもちろん、加工品も販売する農作物直売所の役割も担っています。
訪れた観光客に、ファーム内で加工したビールやパンも販売。
もちろん、食材は地元で栽培した小麦や有機野菜です。
全国に先駆けて、「生産」「加工」「販売農業」である6次産業化を行っているのです。
美味しくて新鮮な特産品を求めて、年間数十万人もの観光客が訪れるそうです。その売上げは運営するレストランや通信販売を合わせると、億単位になるとのこと。
「働く場所を作る」という観点でも影響がありました。
パート・アルバイトを含めるとグループ全体で1000人近くの従業員雇用を生み出したのです。
人を呼ぶ、経済をまわすという活動は、地域の活性化への大きな貢献となります。
ファームをつくるとき、どんな施設を建てるか悩み、こんな方針をたてました。
「観光だけをテーマにすると失敗する。自分たちの考えや理念を伝えられる施設にしよう。」ファームがお客様に提供したかったのは、「地元で採れた農畜産物を使って、他にはない良いものをつくる」という考え方そのものでした。
そのため、広いファーム内には自動販売機が一台もありません。
代わりにエコボトルを100円で販売し、ショップのオリジナルドリンクが50円引きで飲めるようになっています。
ファームでは農業の6次産業化だけでなく、「食育」にも力を入れています。
例えばイチゴ狩り体験は初めの30分は、スタッフがイチゴの育ち方について説明します。
子供たちに虫眼鏡を渡し、「タネはどこにあるかな?」「花びらは何枚かな?」と問いかけ自分達でしっかり観察してもらい、最後に摘んだイチゴを食べてもらう。
この他にも様々なイベントを行い、夏のキャンプや収穫体験に参加した子供のお母さんからは、「子供が、自発的に手伝いをするようになった。」「野菜を食べられるようになった。」といった声が寄せられるほどになりました。
自分たちの考えを明確に発信しているから、魅力的なテーマパークとして成功しているのです。
3.農業者が作った直売所「茨城県つくば市」
農業の発展を脅かす、価格競争。
値付けが障害となり、適正価格での流通が行われなければ、生産者と購買者の繋がりが不安定となり、顧客満足度は下がってしまいます。
手間暇かけて育てた農作物の味は格別であることを、もっと多くの方に知って欲しいと思います。
茨城県つくば市でも、同様の悩みを抱えていました。
価格を決定できない農業従事者の売上が下がり、次代を担うはずの雇用の創出が見込めない恐れが出てきたのです。
そこで「価格競争から品質競争へ」移行する農作物の直売所を(株)農業法人みずほが主体となり生み出します。
直売所では、農業者が自分の野菜を買ってもらうために価格を下げる事が起きない様、ルールを徹底しました。
今ある価格より高値で売るというルールです。その結果、大勢の農業者が農作物を販売し、関東一円からリピーターを獲得し、25万人の動員と直売所の売上高が6億円超えに至るまでになりました。
「日本一」という基準は、明確に自分と相手の商品は違うと区分する上で非常に効果があります。
例えば「日本一甘い」や「日本一大きい」など様々な基準で認定することが可能です。
農作物を用いた町おこし企画を考えるなら、町おこしの成功には農作物やそれにかかわる事で日本一の認定を行う事も、大切です。
4.小さな村で生まれた“ゆず加工品”が大ヒット「高知県馬路村」
林業を主な産業としている馬路村(うまじむら)は、総面積の96%を山林が占めています。高知県の山間地にある小さな村は、輸入材木におされて衰退の一途を辿っていました。
産業に陰りが見えれば人が離れていくのも止められず、過疎と高齢化が進む中、新しい「名物」を使うアイデアを見出したのです。
林業が低迷していくなか、1965年頃に傾斜地でも栽培できるゆずを本格的に作り始めますが、ゆずの生産量は増えていっても、販売はなかなか増えませんでした。
他産地にくらべ、馬路村のゆずは形があまりよくなかったため、1975年頃からゆずを加工品にして販売することに。
初めは、ゆずの佃煮。
次に売り始めたのは、「ゆずのしぼり汁」。
当時、県外ではゆずを食卓で使う習慣が定着していなかったため、思うように売り上げは伸びませんでした。
赤字が続くなか、全国のイベント会場などをめぐり、「ゆずのしぼり汁」を広める営業活動を続けます。
こうした努力により、口コミなどで評判があがり、少しずつ売上げが伸びていきました。
その後も試行錯誤を続け、1988年に、大ヒット商品の「ぽん酢しょうゆ・ゆずの村」や、「ゆずジュース・ごっくん馬路村」を開発。
「ゆずの村」はなんと日本の101村展”で最優秀賞を受賞し、その年に売上も1億円を超えたそうです。
売上げはその後も順調に増え、2000年にはインターネット販売をスタートし、2005年には年商30億円を突破します。
ゆずの栽培を始めてから40年間、こつこつと頑張ったからこそ、ここまで成功したのですね。
では、なぜここまで売上げを上げることができたのでしょうか?
馬路村が成功できた理由は、村を「丸ごと」売り込む“ブランド戦略”が成功したことが大きいと思われます。
「都会にはない空気を届ける」というコンセプトのもと村自体のブランド化に取り組み、「ゆずの加工品を販売していれば大丈夫!」という安直な結果にも飛びつかなかったのです。
自然の豊かさをアピールするための、元気なお年寄りや遊ぶ子供たちを掲載したパンフレットづくりはもちろん、DMを通販の請求書に同封するなど、観光地としての訴求と誘客への取り組みも怠りませんでした。
今では年間数万人の観光客が訪れる、馬路村。
村の人口よりも多い人数が来ていることになります。
「ゆず」という特産品の魅力を発信し、村自体をブランド化する。地域の活性化が成功したこの例から、向上心の継続と、地域の魅力の理解力が必要不可欠であることを学ぶことができます。
5. まとめ
大きな可能性を秘めている、農業というコンテンツ。
これからも農業による町おこし・村おこしの成功例がどんどん増えていけば、農村の過疎化を防ぐ戦略ができていくはずです。
自然が有り、田畑には実りがあり、農業という仕事に誇りを持つ人達がいる…田舎にはまだまだ素晴らしい価値があるのです。
地方の未来、更には日本の未来を作るのは、農業の発展と多様性にかかっていると言っても過言ではありません。
オイシイ農作物が人を呼び、地域の活性化への道のりも創り上げることでしょう。
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