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埋もれていた地元資源から誕生した キャンパーも注目のオリジナルブランドとは 

キャンプ

1. はじめに

ここ数年のアウトドアブームは周知のとおり。

SNS映えするロケーションやコロナ禍での新生活 様式にも合致し、人気をさらに加速させているアウトドアライフは、人里離れた山奥のキャンプ 場や、ただただ絶景だけの(失礼)辺鄙な場所にまで多くの人々が訪れるようになった。

そんな中、千葉県山武市にある大人気のキャンプ場「有野実苑オートキャンプグラウンド」(※ 以下、有野実苑)が、地元・山武杉を使ったアウトドア・ファニチャー・ブランド「KOKAZE」 を立ち上げ、アウトドア好きの間で話題を読んでいるという。

予約が取れない程の人気キャンプ場 が、何故、オリジナルブランドの立ち上げにチャレンジをしたのか? 

そして、その成果は!?

有野実苑のオーナー鈴木章浩氏に伺った。 

有野実苑オーナー

語り手
有野実苑オーナー 鈴木章浩 氏

千葉県山武市にある有野実苑のオーナー
有野実苑には、地域の美味しい素材を使った農園レス トラン「ヴェルデューレ リッコ」も併設され全国でも指折り人気を誇っているキャンプ場。
米国 産キャンピングトレーラー「エアストリーム」の所有者であり、渓流釣りやビンテージ道具など にも精通する筋金入りのアウトドア派。

聞き手
まちおこし.com 野口俊彦

2. オリジナルブランド「KOKAZE」立ち上げの経緯について伺った

まちおこし.com 野口

キャンプ場には沢山のお客様が訪れている様にお見かけしますが、何故、新しいチャレンジとして 山武杉を使ったブランドを作ろうと考えたんですか?

鈴木オーナー

そもそも、有野実苑オートキャンプグラウンドがある山武市では、地元の名産である山武杉が有名で、主に住宅建材として知られた存在でした。

ですが、その一方で建築様式も様変わりし、建築資材としての山武杉の需要は下降傾向を辿っています。

この様な背景の中、山武杉の良さをより啓蒙して、建材としてもっと活用していただいたり、山武杉の新しい使い方を提案していく事が、 行政ならびに地元有志の間では課題となっていました。

そこで白羽の矢が立ったのが、昨今のアウトドアブームで多くのお客様が訪れていた有野実苑でした。

「キャンパーが使うアウトドグッズを、山武杉を使って商品化出来ないか?」
そんな要望が地元の 方々から相談されたんです。 

3. 埋もれている地元資源のブランディング化

まちおこし.com 野口

地元の課題と世の中のムーブメントの合致が、新しいブランドを生むきっかけになったんですね。
商品を開発する上で苦労はありましたか?

鈴木オーナー

当初の滑り出しは非常に順調でした。

時を同じくして、地元山武に住まわれている家具工房「Kirin」さんとも出会えたので、この話を持ちかけ意気投合。

アイデア出しと監修は有野実苑で、製造はKirinさんが請け負ってくれること とになり、ネーミングも、里山の爽やかさをイメージさせる「KOKAZE」と決定しました。

商品開発もトントン拍子に進み、アウトドア用ガス缶カバー「Nukumori」を発表。

木材加工の伝統的な技法【浮造り】をキャンプシーンに合わせてアレンジしたワイルドさが受け、たちまちヒッ ト商品となりました。 

ランプ
ガス缶カバー
鈴木オーナー

商品開発で悩み出したのは、次作となるアウトドア・テーブルの開発を手掛けた頃でしょうか。

徐々にキャンプ場でも「KOKAZE」というブランドが認知されはじめ、常連のお客様からの要望もありアウトドア・テーブルを作ることになりました。

そもそも、木材を使用したアウトドア用のテーブルは既に多くの商品が存在しており、市場は飽和状態と言えました。

また、昨今のアウトドア製品は、ブラックやグレーなどのスタイリッシュな ダーク系の色調が好まれる傾向があり、赤味がかった杉の木はニーズとの乖離があったんです。

どうすれば、競合ブランドとの差別化を図れるか。

一般的な大量生産では表現できない家具職人ならではの木の組み方や、少し丸みを帯びた柔らか いデザイン、オイルを塗り込んだ深みのある仕上げなど、何回もの試作と改良を繰り返しました。

常連さんから「まだ出来ないの?」という催促の声と、職人さんの拘りに板挟みされ頭を抱えた時期もありましたが、今では良い思い出です。

最終的には、ブランド名を冠した代表作であるアウトドア・テーブル「Kokaze]が完成。

地元の間伐材を使用したサスティナビリティー性と、山武杉の風合いを活かした家具職人ならではの仕上がりが評価され、JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2018を受賞するまでに至りました。 

アウトドアテーブル

4. ブランディング後の展望について

まちおこし.com 野口

強いこだわりがアウトドアという垣根を越えて、AWARD受賞の評価にまで繋がったんですね。
今後の展望などはありますか?

鈴木オーナー

キャンプ場の経営は多岐に渡ります。

宿泊・観光・イベント・飲食など、これらのサービスを複合 的に配慮し、常に新い「何か」をサービスとして取り入れなければ今の人気は保てません。

確かにアウトドアブームの恩恵もあり、キャンプ場への来場は増えています。

ですが、その一方でお客様は、より新しくディープな体験を求め行動範囲が広がっています。

現状の来客数に満足してマンネリなサービスを続けていては、近いうちに飽きられてしまうで しょう。

有野実苑では、キャンプ場内に以前より営んでいる観光農園、一昨年より開設したいちご狩り、 そしてアウトドアがテーマの創作イタリアンレストラン「Verdure Ricco」を併設しております が、どれも天候などに影響されやすく収益としては不安定な要素が多いのが悩みの種。

「KOKAZE」はお陰様で好評をいただいており、商品によってはバックオーダーを抱える程の人 気ブランドに成長しました。

今後は山武杉を活用した様々な商品開発をさらに進め、本業の不安定な部分をカバーし、収益の柱の1つに成長させる事が、ビジネスの上で目標となります。 

有野実苑オートキャンプグラウンド

5. 地元資源のブランディング化は、まちおこしに有効か?

まちおこし.com 野口

地元資源を活用した商品開発の事例としては、まさにサクセスストーリーと言えますが、
地元の 活性化に繋がったような感触はありますか。 

鈴木オーナー

正直なところ、直接的に地元を活性させたと実感できるまでには、まだ至っておりません。

ですが、キャンプ場やイベントに訪れた多くのお客様が、山武市と山武杉に深く興味をもっていただいております。

また、行政や地元の有志達も他の分野での商品開発を活発に進めるようになり ました。

今回のテーブルのように、普段は見過ごされがちな地元の資源や文化をより深く見直す事、そし て、従来までの考え方に執着せずに、時代のニーズに即して柔軟に対応する事が、まちおこしに繋がるのは間違いないと自信を持って言えます。 

6. まとめ

お話を伺って先ず最初に感じたのは、鈴木オーナーは心の底からアウトドアが大好きで、自ら楽しんでらっしゃる。

そして、誰よりも山武市に対する地元愛が強いという事でした。

新しいブランドを開発する際は、どうしても収益やビジネスモデルなどを優先しがちです。

ですが、「まちおこし」という観点からすると、収益以前に地元や趣味への一途な思いが共感という形で消費者に伝わり、結果として「まちおこし」に繋がるのではないでしょうか。 

https://kokaze.arinomi.co.jp/

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